結果発表
第5回
学生住宅デザインコンテスト
受賞作品
今回、全国の学生から161点の応募をいただきました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
2019年9月27日(金)に審査会が行われ、厳正な審査の結果、
以下の方々の受賞が決定いたしました。
グランプリ(1点)賞状、賞金 30万円
ちょうちんの灯る家
- 具志堅 美菜子(グシケン・ミナコ)
- 神戸大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修士2年
コンセプト
帰宅時、家に明かりがついていると、私たちはホッとすることがあります。
夜中、他の部屋に明かりがついていて、自分の他に誰かが起きていることがわかると、ホッとすることがあります。
この家には、5つの「ちょうちん」があります。みんなで共有する、大きなちょうちんが一つ。
住人それぞれが所有する、小さなちょうちんが4つ。
ちょうちんと、その周囲を照らす明かりによって、住人たちをやわらかく結う住まいを提案します。
受賞コメント
実家に住んでいた頃、帰宅時家に明かりがついているだけでなぜか安堵感を覚えたことを思い出しました。明かりは私たちに、誰かの気配をそっと、ふうわりと伝えてくれます。ちょうちんの「周囲を照らす」という役割に魅力を感じ、その暖かい明かりが家をやわらかく包み込み、人と人との関係をやわらかくつなぐ仕掛けになるのではないかと思い設計に取り組みました。
グランプリ作品講評
手塚貴晴叙情的な作品。虫かごにも見えて、人がスズムシにでもなったかのような感じが気に入りました。
粕谷淳司木材が備えている様々な強さを使い分け、いままでにない住空間が提案されています。
黒石いずみ行灯によって住空間に満ちる多様な光、集いの場の雰囲気を重ね合わせた美しい案だと思います。
荒木伸介提灯をモチーフにした柔らかなプレゼンと木造を強調した力強い柱と梁のバランスがいいです。
永田晶子童話に登場しそうなデザインと実際に建築として成り立つ点が評価されました。山奥にこんな宿があったら泊まってみたいものです。
準グランプリ(1点)賞状、賞金 15万円
雪灯籠
- 三浦 光雅(ミウラ・ミツマサ)
- 北海学園大学 工学部 建築学科 4年
- 大橋 凜翔(オオハシ・リント)
- 北海学園大学 工学部 建築学科 4年
コンセプト
北海道の住宅は冬になると屋根に雪が積もる為、雪を滑らせて落とす勾配屋根や雪を積もったままにする無落雪屋根が多く見られる。しかし、勾配屋根は落とした雪が隣地境界線を越え、近隣トラブルの原因となることがあり、無落雪屋根は分厚い屋根で積雪荷重に耐えなければならない。どちらの屋根形状も住まいから外部環境を断ち切り、北海道の豊かな自然が粗末に扱われている印象を受ける。このような北海道の住宅に対して革新的となったのが毛綱毅曠の反住器等に代表される入れ子形式である。外部の内部の間に中間領域を挿入し、内外を緩やかに関係付ける。環境工学的な観点からも合理的な手法だが、やわらかい木造の住まいというテーマの下、情緒的な風景をつくる手法に転換することが出来ないだろうか。例として世界で最も寒い地域に住むイヌイットの住居形式に注目する。彼らは一年の内の殆どを厳しい寒さの中で生活している。そこから生み出された住居形式は空気を含んだ雪を断熱材として壁に覆わせるというものである。これらを踏まえ、「無落雪勾配屋根による新たな入れ子形式」として提案をしたい。
受賞コメント
北海道の住宅は積雪を考慮するため、外部環境と関係を断ち切ってしまう場合が多いです。この作品を通して、北海道の自然はとても美しく、我々の生活を豊かにしてくれるものだと再認識することが出来ました。
HINOKIYA賞(1点)賞状、賞金 10万円
積層する「もくしろ」
- 山田 瑞月(ヤマダ・ミヅキ)
- 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻 修士2年
- 夏本 明彦(ナツモト・アキオ)
- 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻 修士2年
- 荒野 颯飛(アラノ・ハヤト)
- 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻 修士2年
コンセプト
木のやわらかさとは何か。
木は可変である。
使う人々により手が加えられ、色が変わり、角が取れていく。
住まい手により使われ方が変わる。
私たちは木が持つその「余白」を「もくしろ」と呼ぶ。
空間の中心から生み出される「もくしろ」は住まう人々に多様な空間を創り出し、
家族の形、人間関係の移り変わりとともに姿を変えていく。
井桁を中心とした空間の周りに配置される諸室。
「もくしろ」を使いこなしていくことで、
木造の可変性を生かしたやわらかい木の住まい方を提案する。
受賞コメント
ありがたい賞を頂き、大変光栄に思います。
物質としての木の強さと柔らかさを自分たちなりに表現できたのかなと思います。
木が演出する空間性を現代の生活に翻訳するような建築を考え続けていきたいと思います。
HINOKIYA賞作品講評
荒木伸介木材を井桁に組み通風と採光を取り込みながら弾状に配された諸室とつながっている。現しの木材と全体の発想がやわらかい良い作品です。
優秀賞(3点)賞状、賞金 5万円
Contrast
対をなす風景
対をなす風景
- 角張 渉(カクバリ・ショウ)
- 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築学専攻 修士1年
コンセプト
私たちは、モノとモノを比較することで、その性質を捉えている。
木の持つ“柔らかさ”もまた、都市の中のコンクリートでできたビルや、ステンレスでできたスプーンなど、別の物質と対比することで、そのイメージを形成する。
本設計では、印象的かつ構造的にも“柔らかさ”を持つ木造住宅を支える“固い”部分である大地との接合部としての〈基礎〉を拡大化し、空間化することで、“柔らかい”空間と“固い”空間の対比を発現させ、住宅の中に木の持つ“柔らかさ”を顕在化させる。
受賞コメント
私たちは多くの情報に囲まれ、それらを無意識の内に対比させることで、モノを認識しています。木造住宅に内在するカタさを表現することで、対比的に柔らかさを顕在化させる、人の無意識に作用する建築を提案します。
柔人の柔宅
- 鈴木 里歩(スズキ・リホ)
- 金城学院大学 生活環境学部 環境デザイン学科 4年
コンセプト
― Action ―
行動によって視線・視界に変化を生み、空間を変化させる。
― Time ―
成長による体格や心の距離感の変化により、空間を変化させる。
受賞コメント
変化することによって「やわらかい」と感じる。その変化は時間を経て、人の成長や行動から生まれると考え、変化に対応した住空間を提案しました。住人も住宅も「やわらかい」繋がりを持った一体空間を生み出します。
屋根下の床
- 山口 大輝(ヤマグチ・ダイキ)
- 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築学専攻 博士前期課程2年
コンセプト
かつての人々は、竪穴式住居や高床式住居のように地面を掘り下げたり、床面を地面より高くすることで生きるための環境をつくった。また、日本古来の建築様式をもつ寺院の反り屋根は木造特有の美しさがあった。そのような先人達の知恵にまで立ち返り、木造のもつ空間特性について考えた。日差しを遮るために屋根を架け、地上から少し低くなった土間と少し高くなった板の間をつくった。大屋根は周囲に広がる田園風景のなかにささやかに住まうための空間をつくる。
受賞コメント
屋根と床によって規定された二つの異なる性質を持った空間は、木造特有の領域性やしなやかさによってひとつの気積のなかに共存している。
審査員特別賞(3点)賞状、賞金 3万円
脈打つ生命体
- 松永 時斉(マツナガ・トキナリ)
- 東海工業専門学校金山校 工業専門課程 昼間部 建築工学科 2年
コンセプト
今も昔も人は、自然に生かされて生きている。それは恒久的な事実でありながらも、今の大半の人々には忘れられている事実である。現代では、人間が自然の上位に立ち、自然をコントロールする立場にいるという虚構に無意識的に陥ってしまっているように感じる。そこで、人が自然の変遷に身を置き、自然との向き合い方を模索しながら、材料としてではなく、同じ生命体として共生していけるような空間を提案する。
受賞コメント
現代は、様々な技術が生まれ、生活の効率化のスピードが加速している。
そんな現代とは乖離した、原始的な空間で暮らす人々を想像しながらこの作品をつくった。
種から木になり、やがて自然に還るという膨大な時間の中での営みは人に新しい気づきを与えてくれると思う。
トラス×テラス×照らす
- 星野 健太(ホシノ・ケンタ)
- 愛知工業大学 工学部 建築学科 2年
- 五十嵐 友雅(イガラシ・ユウガ)
- 愛知工業大学 工学部 建築学科 2年
- 戸松 拓海(トマツ・タクミ)
- 愛知工業大学 工学部 建築学科 2年
コンセプト
関東大震災の直後、大正12年頃(1923年)「建物は硬くあるべきか、柔らかくあるべきか」についての論争が起こった(柔剛論争)。
近年の木造住宅では、耐震壁やブレースを用いて建築材料を接合し、変形を少なくする、剛構造の考え方が一般的である。
法隆寺などの古建築は、釘や金物を使わず、木を巧みに組み合わせることで、接合している。
古建築の木組みが近年の木造住宅やRC造と異なる点は接点を剛に接合しないことである。
建物にしなやかな変形能力を持たせ、地震の揺れを吸収しようとする構造。
これこそが木造、木組みのやわらかさであり、五重塔が1400年以上、地震で倒壊していない理由である。
今回提案する住宅は、柔構造の考え方を取り入れつつ、新しい住宅の形式、木造の可能性の広さ、自由度の高さを再確認できる家。
受賞コメント
木造のやわらかさって何だろうと考えたときに、法隆寺五重塔のような木造ならではの建物を思い描いた。
木組み(トラス)を用いて階ごとが独立しており、地震の揺れを吸収できるような、柔構造の考え方を取り入れた。
紙を纏う住まい
- 中村 大輝(ナカムラ・ダイキ)
- 大同大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修士1年
- 杉本 尚樹(スギモト・ナオキ)
- 大同大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修士1年
コンセプト
やわらかい木造の住まいとは、障子のような建築である。
住まい自体が大きな障子となり、好きな場所に紙を貼っていく。
破いてもいい、壊れたら直せばいい。
暑いときは紙を剥がし、寒い時は紙をたくさん貼る。
モノが増えた時は、紙で囲って小さな部屋を作る。
大掃除の時に、障子を貼り替える日本の風景を設計と捉えることで、住人が間取りを自由に変更できる、やわらかい木造の住まいとなる。
受賞コメント
紙を張り替えることで自由に部屋の大きさが変えられる住まいをつくりました。住まい全体を障子で構成することで、壁の位置を簡単に変えることができ、その時々のライフスタイルや季節に順応する、やわらかい住まいを提案しました。
入選(6点)賞状
行灯の家
- 荒井 亮(アライ・リョウ)
- 名城大学 理工学部 建築学科 3年
コンセプト
「やわらかいもの」は人の心を落ち着かせる。
「やわらかいもの」は変化する。
昼と夜とで姿を変える行灯は古くから人々の心を温め続けてきた。
そんな行灯のやわらかさを活用した住宅の提案。
受賞コメント
行灯には時間を内包するやわらかさと人間の心へ訴えかけるやわらかさがあります。今回、1つの部屋を1つの行灯にすることで、行灯の中にいる人の存在がその人自身または周囲の人へ癒しをもたらしてくれるような住宅を目指しました。
緑道の憩い
- 平 遼太(タイラ・リョウタ)
- 神奈川大学 工学部 建築学科 3年
コンセプト
― 自然のやわらかさ ―
やわらかい木造の家とは自然により近い
存在であり形態は自然をかたどることで
緑道の一部となりここに生まれる
― 自然に触れる ―
柱に触れてみたりあるいは
植物に触れてみたり
触れるということで
物の本質を知る
― 自然を見つめる ―
普段は何気なく通り過ぎてしまうが
立ち止まり腰をおろすことで
見えなかった風景が見えてくる
― 自然を匂う ―
土の匂いや風の匂い自然の中には
たくさんの匂いがある
自然の匂いを嗅ぐことは
人に安心感を与える
― 自然と会話する ―
人と自然は元々は共存していた
人は自然から離れてしまった
人が自然にもう一度
寄り添うきっかけを作る
ここに訪れた人々は
自然と向き合い
自然と安らぐ
受賞コメント
この度は、初めてのコンペで選出していただき大変嬉しく思います。
私の作品では、自然のかたちを建築に落とし込むことで人、自然、木材がより密接に関係して緑道の憩いとなる場を提案しました。
小屋ともに暮らす
- 三吉 奈々未(ミヨシ・ナナミ)
- 金城学院大学 生活環境学部 環境デザイン学科 4年
コンセプト
やわらかい木造の住まいとは何かと考えたとき、人の住まい方や時間の経過と共に、変化していく事を柔らかさととらえた。
住宅の機能を Private room(個室) Kitchen&Dining(共用部分) Toilet&Bath(衛生機器系)
の3つの小屋に分け、必要な機能を必要な数だけパズルのように組み合わせ、住まう人がそれぞれの住まい方にあった住宅をつくる。
3つの小屋の機能を組み合わせると1つの住宅ができあがる。また、既存の住宅にプラスでほしい機能の小屋を組み合わせることもできる。自宅の敷地の中に離れのような特別な居場所が生まれる。
受賞コメント
住人や時間の経過とともに変化する住宅をやわらかさと捉えました。住宅の機能を3つの小屋にわけ、各々の住み方にあう小屋(機能)の組み合わせで作る住宅を提案します。また既存の住宅に加え、家族の増減など環境の変化にも対応するよう考えました。
木の器
- 大里 穂乃佳(オオサト・ホノカ)
- 法政大学大学院 デザイン工学研究科 建築学専攻 修士1年
- 早川 陽美(ハヤカワ・ミナミ)
- 法政大学大学院 デザイン工学研究科 建築学専攻 修士1年
コンセプト
かるい けれど おもい。
よわい けれど つよい。
あたたかい けれど つめたい。
おおきい けれど ちいさい。
可変 けれど 不変。
吸収する けれど 反射する。
継承する けれど 断絶する。
やわらかい けれど かたい。
受賞コメント
現代日本の林業の問題を踏まえ大径材の利用を住宅において考え、木材の許容するやわらかさを表現できる構法の提案をいたしました。自分の手で木という素材で家を変えていくことにより現在の木造住宅では感じられない素材体験ができるのではないでしょうか。
Boat house-船大工の技術継承のための家-
- 木村 一暁(キムラ・カズアキ)
- 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻 修士1年
コンセプト
船大工の技術
日本の船大工は、鋸摺り(のこずり)や曲げ木といった独自の優れた技術で西洋の大工たちよりも精度の高い船を作り続けてきた。
減少する船大工
現在、日本では船大工の数は著しく減少しており、優れた技術を失いつつある。
複雑な曲面形状を用いた建築設計技術の向上
建築設計の世界では、コンピューター技術の向上により、複雑な曲面形状の設計が可能になってきている。
船大工の技術を用いた「やわらかい木造の住まい」の提案
そうした背景を踏まえ、複雑な曲面形状を高精度で実現できる船大工だからこそ作ることのできる有機的な木構造を用いた「やわらかい木造住宅」を提案する。
受賞コメント
建築以外の構築物に着想を得た住宅を提案しようと考えました。船の持つ構造の美しさを表現しようとしたところ、背景にある日本の船大工の優れた技術を発見することができました。そうした技術は木造建築の可能性を広げられると感じています。
イエを育む
- 内田 俊太(ウチダ・シュンタ)
- 明治大学大学院 理工学研究科 建築・都市学専攻 1年
- 三須 裕介(ミス・ユウスケ)
- 明治大学大学院 理工学研究科 建築・都市学専攻 1年
コンセプト
木はやわらかい。ではその木を組み合わせて作る木造建築は全てやわらかいのだろうか。
材料としての木を建築にするのも、その後の空間を使うのも、我々人間である。また、「やわらかさ」は触って、外から作用を加ることで初めて認識する“感覚”である。
つまり、「やわらかい」という状態は建築単体では到底獲得できないのである。
この建築は人が本来持っている創造性を喚起する。そしてその創造行為を十分に享受し、相互に関係しあえるイエ。それこそが柔らかな木造の住まいではないだろうか。
受賞コメント
私たちは柔らかさを建築空間のみから追求するのではなく、作り手であり使い手である人の創造性を喚起することから住宅を考えました。部分の構成の工夫が先行していたので、全体的な組み立て方に課題が残りました。